ランナー必見!
自分に合った正しい「感覚」を身につけるための練習法『Out&Back』のご紹介
フルマラソンを楽しむランナーのみなさん、こんにちは!
美走ならしのRC コーチのMIHOです。
新型コロナウィルス感染症拡大予防のため、全国的に緊急事態宣言が発令され、ランナーにとっても厳しい状況がつづいています。
今は大会中止が相次ぎ、マラソンの目標設定が難しい、モチベーションが上がらないと思っているみなさん、多くいらっしゃると思います。
どんな練習をしていこうかなぁ~、ひとりでもできる練習ってなにかなぁ〜、という方!
いまこそ、土台の土台を築いてみませんか?
「感覚重視」「数字に囚われない」「時計からの解放」を体験してみませんか?
自分で自分のペースを把握し、そのペースを守るセルフコントロール力は、トレーニングを進めていく上でとても大切なことです。もちろんマラソン大会でも。
大迫傑選手が、東京マラソン2020で男子マラソン日本新記録2時間5分29秒で走ったときも、レース中、一度集団から離れ、様子をみてから、その後適切な場所でスパートをかけ日本新記録を出しましたよね。その時の解説の増田明美さんは「彼は、死んだふりをしてたんですね。」とおっしゃっていましたが、彼のように冷静に自分を分析しながら走れる能力には、目を見張るものがあります。
彼のように、自分自身の適切なペース感覚をカラダで覚えて、トレーニングや大会で活かしてみたいですよね。
そこで、
ワールドスタンダードランニングメソッドの『アーサー・リディアード式トレーニング』から、
基本的な練習方法のひとつ、『Out&Back』(アウト&バック)を紹介します。
リディアードの本質は、「感覚重視」「数字に囚われない」「時計からの解放」なのですが、それを体験できるのがこの練習でもあります。
リディアードのランニング・トレーニングについてはこの本「リディアードのランニング・トレーニング」 |
こちらもオススメ「リディアードのランニング・バイブル」 |
リディアードの理論については、
治療家であり、ランナーでもあり、丁寧なランニング指導でも定評のある宮川浩太さんが、
古典に学ぶトレーニングのヒント いま改めてひも解く『リディアードのランニングバイブル』
で、わかりやすくまとめて紹介してくださっていますので、参考にしてみてください。
さてさて、本題にもどりましょう。
この『Out&Back』は、
その日の自分の "体力"・"能力"・"体調"に合わせて走ることができ、
さらには、継続した練習を正しく行っていくことで、有酸素能力がアップできるトレーニングです。
まずは、リディアードの本質の「感覚重視」「数字に囚われない」「時計からの解放」を体験してみましょう。
といっても、リディアードの本質の「感覚重視」「数字に囚われない」「時計からの解放」といわれても、
「感覚って?」「GPSウォッチは活用したーい!」
ですよね。
データ収集に便利なGPSウォッチがあるのですから、さすがに使わない手はありませんので、時計を外しましょうなんてことは言いません。
GPSウォッチをつけて走ってもらっても構いません。
ただし、
使って走ったとしても、走った後に、自分の感覚とGPSウォッチからのデータとのすり合わせで利用する程度にとどめてください。
走る時は、GPSウォッチは、スタートで開始ボタンを押す、折り返しでタイムをチェックする、ゴールで終了ボタンを押すだけにしましょう。
より自分の走りに集中するためには、走行距離や心拍を知らせるアラームを止める設定にしたほうがよいでしょう。
まずは、コースの設定です。
自分が走れそうな時間を往復コースで走ることが望ましいのですが、周回コースでも構いません。おおよそ平坦なコースが望ましいです。
スタート地点を決め、走って折り返し、スタート地点にもどってくるようなコースにするとわかりやすいです。
『Out&Back』は、30分ぐらいは走れそうであれば、15分ペースを守って走り、折り返し、来た道をそのペースをキープして走るトレーニングです。
できる限り『イーブンペース』で全行程を走れるように心がけます。
走り方は、
目一杯と感じるスピードよりゆっくり目のペースで気分良く走り始め、行きも帰りも同じペースを守って走ります。
だからといって、頑張ってはいけません。無理にペースを調整することなく、行きと帰りが同じ時間になるように走ってください。
60分走れそうだという方は、30分で折り返してください。
ペース感覚の目安は、息は切れないが、ちょっと気をぬくと遅れをとるといったペース。普段のジョグより少し速いなというペースで、ゴールしたときに、走ろうと思えばもっと長く走れると思える状態です。
そう、ここでお気づきですか?
この練習は、ペースの指定がないのです!
ですから、ご自身の感覚だけが頼りになるトレーニングなのです。
さて、走り方にもどります。
速く入りすぎて後半きつくなるのを避けるために、思っているより少し遅めに入って、後半少しだけ上がるイメージで走ってみましょう。(だからといって、気分に合わせて後半上げすぎてはいけません)
できる限り『イーブンペース』で全行程を走れるように心がけてください。
上手く走れなくて大丈夫ですよ。はじめての練習なのですから。
どうでしょう?
走るイメージが湧きましたか?
さぁ、それでは早速走ってみましょう。
といってもまずは、体操をしてウォーミングアップです。
15分から20分程度、体や筋肉があたたまり走れるぞという準備ができるように軽いジョグをします。
ウォーミングアップがすみました。
さて、いよいよスタートしましょう。GPSウォッチのスタートボタンを押したら開始です。
スタートボタンを押したら時計をみてはダメですよ。
どうですか?走り出しは、少しゆったり目に入れましたか?
普段のジョグより少し速いなというペースで、息は切れないが、ちょっと気をぬくと遅れをとるといったペースで走れていますか?
よいリズムをつかめていますか?
走れると思った時間の半分まできたら折り返しです。
前半走ってきた感覚をベースに、無理にペースを調整せずに、ちょうどよく調整されたペースを維持できていますか?
呼吸も走りも安定していますか?
さぁ、ゴールです。
ゴールの時点で、走ろうと思えばもっと長く走れると思える状態でしたか?
おっと、クーリングダウンを忘れずに。
このクーリングダウンの間に、感覚的なペース配分はどうだったか?リズムは?呼吸は?疲労度は?まずは自分のカラダとアタマでこの感覚をとらえられましたか?
クーリングダウンが終わったら、整理体操をして終了です。
お疲れ様でした。
このあと確認作業をしますよ。
すべてが終わって、シャワーを浴びて、パソコン前で、ご自身の感覚とGPSウォッチのデータをすり合わせてみましょう。
いかがでしたか?
前半と後半のペースが同じようになるように心がけ、それがうまくできましたか?
スタート地点まで戻れなかった方は、前半のペースが早すぎましたね。次は、前半をもう少し抑えめに走り出すとよいでしょう。
スタート地点をすぎてしまった方は、後半あげすぎたか、前半スローペース過ぎたかですね。
1回で、ペースもスタートゴール地点の差も少なかった方、納得いく走りができた方は、なかなかですね。
脚づくり期間に、この『Out&Back』でご自身の感覚でのペースをつかんでおくと、それを参考に走り込み期間によい練習ができるでしょう。
この感覚をベースに、長い時間走ることと、疲労回復のための短い時間を走ることを交互に行っていくことで、より効果的な走り込みができるようになります。
6月にこのようなペース感覚をつかむ練習・走りこむことをしておく、その後、土台となる練習、そして移行期にマラソンインターバルトレーニングに対する準備をしておくことで、9月からの本格的なフルマラソン練習にスムーズに入ることができると思います。
感覚とは別に、データを活用して走ってみたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
心拍を基準にすると、一定のペースでは走れませんが、強度を変えることなくトレーニングすることができます。
心拍をみながら走り込みしてみたいという方は、130~140拍を目安に取り組んでみてはいかがでしょう。
話を『Out&Back』にもどします。
この『Out&Back』を、はじめてトレーニングに取り入れるという方は、まずは感覚を掴むために、3回は実施するとよいでしょう。
例えば、毎週末の日曜日に3週にわたって3回、やってみましょう。
このトレーニングは、練習の一つですから、その間の平日~土曜に2~3回はLSDやジョグなど走ってくださいね。
1回目走り、2回目に1回目のフィードバックを元に調整して走る、3回目にはなんとなくこの感覚かな?というものが会得できたらこっちのものです!
そして、その後も定期的に『Out&Back』トレーニングに組み込んでいくと、ペース感覚のほかに、体力もついてきて、同じ時間を走っても長い距離を走れるようになってくるでしょう。
外的要因などで、心拍が高い時などは、必然的にペースが落ちます。ペースがおちても適切な練習強度は保たれますので、心配せずに行なってください。
コースなどによる要因での走る感覚の調整は、緩やかな坂や多少の風や雨には、リズムを保って走れるようにしてみてください。大会本番でもこの感覚は役立つはずです。
この『Out&Back』は、走り込み期だけではなく、レースでも代用することが可能です。
例えば、フルマラソン前のハーフマラソン大会で、この『Out&Back』をテストとして取り入れ、進捗状況を把握する。なんてこともできます。そうすると、追い込み過ぎずになおかつ、ご自身の現段階の状況が把握できます。
そこで得られた感覚やデータなどを調整期に活かしていけるでしょう。
色々と使える『Out&Back』感覚重視のペースラン、やってみたくなりませんか?
今のうちにこのペース感覚をつかんでおきましょう。
今の雑誌の載っているトレーニングメニューなどは、高い知識や経験に基づいた練習で、とても効率よくまた科学的にも効果の高いメニューが多く紹介されています。
それらを自分にあったものにするために、また、上手にこなしていくためににも、今できる土台づくりが大切です。
この『Out&Back』のペースを参考に、走り込み期に、長い時間走ることと、疲労回復のための短い時間を走ることを交互に行っていくことで、より効果的な走り込みができるようになります。
またメニューはこれだけでなく、LSDなど長く体を動かし続けるランも組み合わせるとよいでしょう。
この土台づくりさえして、スムーズに9月からのマラソン練習に入れたら、どんなメニューでもこなせる身体になっていることでしょう。
長い時間からだを動かし続けることになれていて、ペース感覚をつかんでさえすれば、どこのランニングイベントレッスンにいっても、大会に出場しても、まわりの速いランナーに惑わされず、自分のペースで走り切ることができるはずです。
ただ気をつけなくてはいけないのは、
この「感覚重視」というのは、『ご自身のカラダにとっての正しい「感覚」』ということです。
自分のやってみたい!とか、やれる!といった根拠のない感覚ではないということを覚えておく必要があります。
「感覚重視」というのは、『ご自身のカラダにとっての正しい「感覚」』
そのときの、体力・能力・体調によって自然に自分に合った強度で走れる『Out&Back』
正しい感覚で、無理せず、健康的に楽しく走って、さらに着実に強くなっていけたらいいですよね。
美走RCでは、秋冬のマラソン大会にむけて、6月から土台の土台づくりがはじまります。まずは、この『アウト&バック』をしてペース感覚を養ってから、走り込み期に入ります。
ペース感覚バッチリ!という方も、今一度自分の現在の体力にあったペースを再確認してみましょう。
『Out&Back』アウト&バック
:「感覚重視」→『ご自身のカラダにとっての正しい「感覚」』を身につけるトレーニング
【コース設定】
スタート地点を決め、往復のコースで、前半と後半が無理なく『イーブンペース』で全行程を走れるようなコース。ペース設定がないので、自身の感覚だけがたより。
【ペース感覚】
ペース感覚の目安は、息は切れないが、ちょっと気をぬくと遅れをとるといったペース。普段のジョグより少し速いなというペースで、ゴールしたときに、走ろうと思えばもっと長く走れると思える状態です。
この練習には、ペース設定はありません。
【走り方】
往復のコースで、前半と後半が無理なく『イーブンペース』で全行程を走れるように心がける。
速く入りすぎて後半きつくなるのを避けるために、思っているより少し遅めに入って、後半少しだけ上がるイメージで走ってみる。だからといって、無理やり、または気分に合わせてペースを上げ下げしない。
毎週末など3回程度実施するとコツがつかめてきます。
【その他】
心拍データ:外的要因などで、心拍が高い時などは、必然的にペースが落ちます。ペースがおちても適切な練習強度は保たれますので、心配せずに行なってください。強度で試してみたい方は、心拍140拍程度を目安にやってみるのもよいでしょう。
【今後の練習大会に活かす】
コースなどによる要因での走る感覚の調整は、緩やかな坂や多少の風や雨には、リズムを保って走れるようにしてみてください。大会本番でもこの感覚は役立つはずです。